少年は残酷な弓を射るの画像
(c)UK Film Council / BBC / Independent Film Productions 2010
イギリスで女性作家に贈られるオレンジ賞を受賞した、ライオネル・シュライバーの小説を『モーヴァン』のリン・ラムジーが映画化。異常なまでに母に反抗する息子と、息子を恐れる母の愛憎を描く戦慄のサスペンス。『フィクサー』でアカデミー賞を受賞したティルダ・スウィントンが、主演の他製作総指揮を担う。スウィントンの息子役を演じた新星・エズラ・ミラーの衝撃的存在感に注目。

はっきりと、血を連想させる赤を基調にした印象的な映像。特に、恐らくトマト投げ大会と思われるオープニングシーンは、よく聞いていると音声が別な場面のものであることが分かる。人々の悲鳴、物が刺さるような音…何とも好奇心を駆り立てる導入部だ。「結果」から始まるこの物語は、一人の中年女性が何故か人目を避けながら痛々しく生活している姿を、現在と過去を交叉させながら追い始める。

(c)UK Film Council / BBC / Independent Film Productions 2010やがて映画は、彼女の過去へ。結婚、妊娠、男の子を出産。しかし、この息子は赤子のときから母親にだけ反抗的だ。それも、決して無邪気ではなく明らかに悪意がある。悪魔のような息子…母親の視点に徹底した演出は不安の伏線を張り巡らせ、謎を追う観客を否応なしに引きずりこむ。一体これから何が起きるのか。息子の目的は何なのか。母親は単に育児が恐いだけなのか。物語は説明のつかない不条理さを示しながら展開し、全てを破壊する惨劇へと向かう。息子の心には、皮肉にも幼い頃に母が読み聞かせたあの物語が記憶にあったのか。

耽美なイメージを強調したポスターは内容と合っていない気がするし、直接的すぎる邦題も良くないと思うが、とにかく強烈な印象を残す映画である。 観たら、決して忘れないだろう。
(池辺麻子)

少年は残酷な弓を射る
2011年 イギリス映画/112分/監督:リム・ラムジー/出演:ティルダ・スウィントン 、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラーほか/配給:クロックワークス
6月30日、TOHOシネマズシャンテにてロードショー
オフィシャルサイト http://shonen-yumi.com/