グローバル・サスペンス超大作『コンテイジョン』は、11月12日(土)より全国公開中。メガホンを取ったスティーブン・ソダーバーグ監督が、来日記者会見を行いました。 その模様を完全リポートします。

ウイルスを敵とすることに面白さと難しさがあった

コンテイジョンの画像
(C) 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
スティーブン・ソダーバーグ監督:
日本には3年ぶりに来ました。今年3月に日本で大変な出来事が起こりました。この作品『コンテイジョン』は、究極の状態に置かれた時、人間としてどう対応するのかを描こうと思って作りました。来る途中でも考えていたのは、日本のことでした。早く日本のみなさんが以前までの生活に戻れるようになって欲しいと願っております。

質問:マット・デイモンに脚本を送った際、読み終えたら「手を洗うように」と伝えたそうですが、現場でも何か対策を取ったのでしょうか?また監督も撮影後、何か意識の変化はありましたか?

スティーブン・ソダーバーグ監督:
この作品に関わった人間ならウィルスのことを考えないでいるのは不可能だと思います。私も作品を作り終わったからといって忘れたわけでもありません。閉鎖された飛行機の空間やトイレなどは、やはり少し怖いですよ。かといって態度を変えたわけでもありません。人と普通に握手はしますし、マスクをしているわけでもありません。

ただ映画として考えた時に、目に見えないウイルスを敵として描くのはいいなと思いました。例えば「トラフィック」であれば、麻薬は自分で避けようと思えば避けることができます。ですがウイルスは、どこにでもありますから避けようがありません。どこにでもあるし誰にでも関係しているので映画のストーリーの主題としてはとてもよいわけです。

質問:映画では、ウイルスの恐ろしさ以上に恐怖状態に陥った人々の様子が描かれていたのが印象的でしたが、演出する上で難しかった点を教えて下さい。また、監督自身が個人的に恐怖を感じるのは何ですか?

スティーブン・ソダーバーグ監督:
映画の設定上で考えると、悪漢が人間ではないというところに面白さと難しさを感じました。ウイルスは生きてはいるけど、見えないし、説得しようとしてもできない。それを敵として描くのですから。

僕自身の恐怖といえば、自分が感じている自分の周囲や世界が、他の人が感じているものとは違っていたらということです。僕の現実が真実ではないとしたら。それが僕の悪夢です。起こっていると思うことが嘘だったら? 映画でいったら、ロマン・ポランスキー監督、カトリーヌ・ド・ヌーブ主演の『反撥』のような状況です。そんなことが起こってしまったら混乱してしまうでしょうね。

主演クラスの豪華俳優陣が集う理由

質問:主演クラスやオスカースターなどとても豪華なキャストが出演していますが、出演はどうやって実現したのですか? また配役は難しかったのでは?

スティーブン・ソダーバーグ監督:
今回の作品はアンサンブルで沢山のキャラクターが登場しますが、その分、各自の撮影期間も短くなるので、むしろイエスと言ってもらいやすい状況だったと思います。ローレンス・フィッシュバーンさんでもケイト・ウィンスレットさんでも8日間だけ来て欲しい。それで撮影は終わるからといえば、出演すると言ってもらいやすくなります。

スティーブン・ソダーバーグ監督の会見画像
スティーブン・ソダーバーグ監督
重要なのは、情報量がたくさんあって映画自体のスピードが早い展開のため、優れた俳優たちが必要だったということです。映画を観ている観客がロープに掴まってストーリーに付いて行ってもらうために、演技力のあるスターが沢山必要だったんです。

質問:マット・デイモンさんをはじめ、多くの出演者たちが、ソダーバーグ監督作品だから出演したとおっしゃっていました。監督のどのような面に惹かれて皆さん出演するのでしょうか?

スティーブン・ソダーバーグ監督:僕は俳優たちを好きだからかな。ほかの監督の中にはそうじゃない人もいるようなんだ。俳優たちがセットに来れば、僕は彼らの言っていることをちゃんと聞く。自分たちが全身を持って役作りのプロセスができること、映画作りのコラボレーションがちゃんとできることを彼らは知っているんだと思う。

この業界では時に驚く話を聞くこともある。軽んじた言葉を聞かされたり、一生懸命やっていることに関してありがたみを感じてもらえないケースもたくさんあるらしい。私は彼らの仕事は、すごく怖いことだと思う。自分自身をさらけだす。それにより自分の弱みも同時に見せてしまう。そんな彼らの仕事に僕は敬意を払う。

彼らと仕事するときには、安心してもらい、いい経験をしてもらえることをみんなに感じてもらいたいと思うんだ。作品を作ってからもう何十年にもなるので、僕と仕事をしたことがある俳優たちの経験は俳優同士の噂や会話で伝わっているのかもしれない。マット・デイモンは今回6度目の仕事だった。これからも俳優たちとはいい関係を構築していきたいと思うし、それはお互いにいい経験になるのだと思う。

ありきたりでないシーンの作り方は

質問:WHO(世界保健機関)など実在の機関が登場しますが、留意した点と、映画では描かれなかったけれど、実際に研究者に綿密なリサーチをしたことで監督が知りえた驚愕のエピソードなどがあったら教えてください。

スティーブン・ソダーバーグ監督:
映画では描ききれなかった膨大な素材がありました。撮影した分でも一時間以上はカットしています。それらのシーンも僕にとっては興味深い素材でした。いくつかの映画か、12時間以上のミニシリーズでも面白かったと思います。ですが、僕たちは恐怖感を煽るためもあり、映画のリズムを加速させる必要もありました。だからタフになってかなりの量をカットせざる得なくなったのです。

質問:撮影中の出来事でよかったことなどあったら教えてください。
スティーブン・ソダーバーグ監督:
1つ例を挙げると、マット・デイモン演じる夫が、集中治療室で医師から妻の死を告げられるシーンがあります。よく映画にでてくるようなありきたりになりそうなシーンですが、これが正しいというようなシーンがなかなか撮れませんでした。何かが欠けている感じでした。

いつも撮影ではコンサルタントに立ち会ってもらうのですが、今回はER(緊急救命室)の医師に立ち会ってもらっていたので、状況を説明しました。彼の話だと、こういう場合にに家族が見せる反応は二種類あるそうです。ひとつは感情的になって興奮する。あるいは亡くなった事が信じられずに、「実際に話をしてもいいか」と医師に聞く。

これを聞いたとき、よし、そのシーンを使おう、それでありきたりでないシーンができるはずだと思いました。マットは直ちにどういう風に演じればいいのかを察してくれました。

質問:ファンとしてはグィウネス・パルトローさんのあるシーンがとてもショッキングだったのですが、出演をどのように説得したのですか?

スティーブン・ソダーバーグ監督:彼女はあのシーンについてとてもエキサイトしていました(会場笑い)さきほども申し上げたように、撮影中はコンサルタントに立ち会ったもらっています。このシーンでは医療の検査官がおりまして、グィネスは詳しくこの場合は舌はどうするのかとか、顔には何かついているのかなど聞いていました。とてもリアルなシーンになったと思います。後で聞いた話ですが、『プライベート・ライアン』の撮影スタッフをしていた人が、『コンティジョン』のこのシーンを見て、気分をが悪くなったそうです。それを聞いて、そうか、シーン作りはうまくいったんだな、と思いましたよ。

人生は問いを投げかけてくる

質問:世界は経済的にも混迷していると思いますが、映画監督としてどういう意識で映画を作られているのですか?

スティーブン・ソダーバーグ監督:私たちは直面する問題を二つに分けて考えて見なければならないと思います。ひとつは自分が自分で作り上げてしまった問題。それからそれ以外の問題です。フラストレーションがたまるのは、自分が自分で作り上げてしまった問題に直面したときでしょうね。

3月に東日本大震災が起こったように何かが起こってしまったときに、もしかしたら、人間として自身のベストな面を目にする機会を得ることになるかもしれません。そういう究極な状態に置かれたときに、人間というのは、コミュニュティやグループのために何かできるか、自分を捨てて何かができるかどうかが問われるのではないでしょうか。

それができるとしたら、もし自分が問題を作り上げてしまったとしても、問題の一部は自分で解決できるのではという希望がわきあがってくると思います。

『コンテイジョン』のメッセージは、おそらく私たちはそういうことができるのということです。少なくとも映画の中では、そういう状態に置かれたときにパニックになってあわてているだけでは何の解決にもつながらないということです。

それでも人間ですから、たとえば映画の中ででてくるローレンス・フィッシュバーンが演じる人のように、みんなに知らせなくてはならない情報をそれより早く婚約者に伝えてしまうことがあります。それはよいことではありませんが、私も含めて多分この部屋にいる誰もがが、もしそういうことに直面すれば、おそらくとってしまう行動ではないでしょうか。

ただそんな単純なことではなく、さまざまな事柄に関して人生は常に何かに模索し、質問を投げかけてくるものだと思います。自分が知識を蓄えることで、すべての質問に答えが出ててしまったらおそらくおもしろくないでしょう。映画を作るにしても、すべての答えが出ているなら、つまらないものになってしまうのだと思います。(会見ここまで)

エンターテイメント大作から、アカデミー賞監督賞受賞の『トラフィック』まで幅広いジャンルを手がけ、世界で目が離せない監督の1人となったスティーブン・ソダーバーグ監督。その会見は、中身の充実した濃いものとなりました。今後の監督の活躍にも期待したいと思います。

コンテイジョン
2011年11月12日(土)新宿ピカデリー 他 全国ロードショー
オフィシャルサイトhttp://wwws.warnerbros.co.jp/contagion/index.html

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