映画がお祭り・イベントになって久しい。そしてデジタル撮影が一般的になってきました。私のように古い映画ファンは「その時だけ面白い」では物足りないこともあり、下記のような10本になりました。『セッション』は最後の最後まで悩みましたが、ラストが良すぎ私には逆効果で失礼…。

決して誰でも楽しめる作品ではなく私的に驚いたモノを優先してみました。短文で紹介いたしますので、未見の方は是非DVDででもご覧くだされば嬉しいです。では10位からカウントダウンで記していきます。

10】 ヴィンセントが教えてくれたこと

(2014年 アメリカ映画/監督:セオドア・メルフィ/出演:ビル・マーレイ、ナオミ・ワッツ ほか)

少年とダメ親父の友情物語に泣きました。ナオミ・ワッツの人のいい汚れ役も楽しかった。真直ぐな感動ものと言っていいでしょう。

9】 リザとキツネと恋する死者たち

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(2014年 ハンガリー映画/監督:ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ/出演:モーニカ・バルシャイ ほか)

作風は違いますが『アメリ』を連想する女子のファンタジー。日本を題材にしていて笑いまくりましたが(怖いところもあるけれど)、これだけの作品がレイトショーのみの公開ではもったいない。

8】 野火

(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER
(C)SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

(2014年 日本映画/監督:塚本晋也/出演:塚本晋也、リリー・フランキー ほか)

戦後70年に沢山の戦争映画が公開された中、戦場のホラーをこれだけダイレクトにみせた映画はこれだけでしょう。エンタメ映画ファンにはオススメできませんが、夢でうなされるほどの衝撃作でした。

7】 妻への家路

(2014年 中国映画/監督:チャン・イーモウ/出演:コン・リー、チェン・ダオミン ほか)

文化大革命に翻弄される夫婦の物語。久しぶりにチャン・イーモウの本領発揮作ではないでしょうか。

6】 人生スイッチ

(2014年 アルゼンチン=スペイン映画/監督:ダミアン・ジフロン/出演:リカルド・ダリン、リタ・コルテセ ほか)

オープニングの飛行機墜落から驚きのオムニバス。怒りのスイッチは誰にもあるのかもわかりませんが、本作は極端で驚き!

5】 アリスのままで

(2014年 アメリカ映画/監督:リチャード・グラツァー、ウォッシュ・ウエストモアランド/出演:ジュリアン・ムーア、アレック・ボールドウィン ほか)

若年性アルツハイマーをこれだけ完璧に描いた映画はないのかもしれません。ジュリアン・ムーアの主観的演出・演技が凄まじく、多くの認知症(アルツハイマー)のお知り合いがいる方に観てもらいたいリアルな逸品。

4】 フレンチアルプスで起きたこと

(2014年 スウェーデン=デンマーク=フランス=ノルウェー映画/監督:リューベン・オストルンド/出演:ヨハネス・バー・クンケ、リサロブン・コングリス ほか)

スキー場の雪山で人口的に起す雪崩が、こともあろうにリゾートホテルに襲いかかるパニック映画と思いきや、疑心暗鬼の家族の物語にシフトする。面白い切り口の映画でした。

3】 アメリカン・スナイパー

(2014年 アメリカ映画/監督:クリント・イーストウッド/出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー ほか)

戦場の臨場観は流石の演出。殺人の数で英雄なのかと考えると『チャップリンの殺人狂時代』が脳裏をよぎりました。殺人マシーンと化したブラッドリーの家族と病人の物語とみると合点がゆきます。演出の巧さでは2015年公開作一番かも。

2】 バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

(2014年 アメリカ映画/監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ/出演:マイケル・キートン、エドワード・ノートン、エイミー・ライアン、エマ・ストーン ほか)

題名を「バットマン」にすればオモシロかったのに(笑)。バックステージ物としても、妄想と現実のシンクロ映像にまいりました。新時代の傑作の誕生と歓喜しましたが、賛否渦巻きました。

1】 さよなら、人類

(2014年 スウェーデン=ノルウェー=フランス=ドイツ映画/監督:ロイ・アンダーソン/出演:ポルガー・アンダーソン、ニルス・ウェストブロム ほか)

至福の時を感じました。不条理コメディとうたう本作に意味不明と感じる方も多いかもしれませんが、どのシーンを切り取っても芸術品。絵画の連続を映画化したという印象。美術館に行ったような後味の私にとって最高の一本でした。

(選/文 中野豊)