その映画を見終えて外に出ると世界がまるで違って見えることがある。この映画をまだ見ていない人が気の毒だとおこがましくも思うとき、何とも言えない幸福感に包まれる。今年は特にその幸福感を味わう頻度が高かった。おかげで免疫力が高まり身体も敏捷になった気がして、石段2段を一気に跳び下りてふくらはぎに肉離れを起こした。お調子者が幸福感を味わうとよろしくないこともある。「頭の中は30代なのね」と人に言われて自戒。

日本映画

5位 任侠ヘルパー
 草彅剛主演の任侠エンターテインメント。介護施設のお年寄りに「あんた、市川雷蔵に似ているね」「長谷川一夫に似ているね」と言われてすりよられた際の草彅のはにかんだ表情もいい。全編に彼の清潔感がよく生かされている。
・任侠ヘルパー レビュー

4位 僕達急行 A列車で行こう
 
鉄道好きな二人の青年と周囲の人々の交歓を描く人情喜劇。瑛太と松山ケンイチのキャラクターとドラマ展開にわくわくし、社長役松坂慶子のコメディエンヌぶりにも目を見張る。亡き森田芳光監督の軽快なフットワークは永遠だ。

3位 夢売るふたり
 
30代の西川美和監督が腰の据わった演出で見せる、ある夫婦愛の行方。弱音を吐かない妻の松たか子の女丈夫ぶりと、泣き言をもらしては寂しい女心につけこむ夫の阿部サダヲの様子は、名作『夫婦善哉』の巧みなひねりのようだ。

2位 桐島、部活やめるってよ

 短編集のような原作をみごとに1編に編みあげ、個々の人物の心のひだを鮮やかに映し出した青春映画。高校生の間にあるやるせない“格差”は一般社会にも通じるもので、その絶望感とささやかな希望とのブレンド具合が絶妙だ。

1位 鍵泥棒のメソッド
 
銭湯で出くわした殺し屋と売れない役者の入れ替わり喜劇。完璧主義の女性が絡んで展開するドラマの面白さは、20年に1回体験できるかどうかというレベルだ。内田けんじ監督のサービス精神は、明快で颯爽として心やさしい。

外国映画

5位 007 スカイフォール

007スカイフォールの画像
(C)2012 Danjaq, LLC, United Artists Corporation, Columbia Pictures Industries, Inc. All rights reserved.
『ドリームハウス』の好演も忘れがたいダニエル・クレイグは、着実に自身のイメージをジェームズ・ボンド役に塗り重ねている。彼も敵役のハビエル・バルデムも慕うM=ジュディ・デンチが手製の武器で闘うあたりもわたし好み。

4位 ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
 
結婚式の花嫁介添人たちの騒動を下ネタ満載で描くコメディー。お寒いセックスシーンを明るく演じるコメディエンヌ、クリステン・ウィグが脚本も手がけた好編。最近『宇宙人ポール』のアイパッチ姿の彼女を再確認して興奮した。

3位 人生の特等席

人生の特等席の画像
© 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
『グラン・トリノ』がクリント・イーストウッドの最後の出演作になるかと思っていたら最新作が登場。しかもひいきのエイミー・アダムスが娘役となればわたしには贅沢なご馳走だ。終盤の父娘の共闘ぶりがことのほか胸にしみる。

2位 アルゴ

アルゴの画像
© 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 ベン・アフレックがさらに才能を発揮した監督第3作。ホラ話は大きければ大きいほど信憑性がある。悔しいがアメリカ人の発想には叶わないという思いしきり。昨年推しました『ザ・タウン』は彼の監督第2作でした、ここに訂正させていただきます。

1位 ドライヴ

 主演のライアン・ゴズリングの演技に魅了され、夢に見たいと願ってもまだ果たせない。まことに小さな人間の心の綾、ときめき、動揺を鮮明に浮き彫りにし、しかも終局は不明の悲劇。生き続ける(さまよい続ける)恋心の物語か。 (内海陽子)

2012年公開映画のベスト10 中野豊編
・2012年公開映画のベスト10 池辺麻子編
2012年公開映画のベスト10 オライカート昌子

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