『ゴーストバスターズ』(2016)映画レビュー

ゴーストバスターズ わが愛する『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11)の脚本家でヒロインのクリステン・ウィグが、まさか『ゴーストバスターズ』の一員となって登場するとは思わなかった。しかも相方は『ブライズメイズ』のぶっとんだお仲間、メリッサ・マッカーシー。このコメディエンヌ二強の名演技なくして『ゴーストバスターズ』女性版は成立しない。とりたてて『ゴーストバスターズ』のファンでもないのに、大ヒット主題歌が流れたら目頭が熱くなった。

 コロンビア大学教授の椅子が目の前にあったエリン(クリステン・ウィグ)は、昔書いた幽霊研究本がインターネットで売られていると知り愕然とする。犯人は別の大学にいる共同執筆者のアビー(メリッサ・マッカーシー)で、相棒のジリアン(ケイト・マッキノン)ともどもゴーストの存在を信じて疑わない。それぞれの大学をクビになり、やむなく超常現象の調査会社を立ち上げた3人に地下鉄の改札係パティ(レスリー・ジョーンズ)が加わり、さらにイケメンで頭が空っぽのケヴィン(クリス・ヘムズワース)が受付係として雇われた。

 CGの驚異的進歩により、いまやSF映画で描き出せない世界はなくなったが、だからこそ光るのが俳優陣の力だ。エリンは頭脳明晰な美人というわけではなく、浮世離れしたおばさんキャラ。アビーのセンスはなかなかよさそうだが思い込みの強いオタク意識丸出し。凄腕工学博士のジリアンはマッドサイエンティスト一歩手前というかんじ。世間をよく知っている元地下鉄職員パティがバランス感覚を発揮、葬祭業者の叔父から派手な霊柩車を借り受ける。

 ニューヨークを跳梁跋扈するさまざまなゴーストの様子はむろん豪勢きわまりないが、ここでもわたしの目はひいきのクリステン・ウィグの挙動に吸い寄せられる。ニューヨーク市長(アンディ・ガルシア)はゴーストの存在を否定する方針を取り、騒動はすべて作り話として“ゴーストバスターズ”に責任を押しつける。しかし危機は迫る。高級レストランで気取っている市長一派に危機を知らせようと、エリンは大きなガラス窓(はめごろし?)を一枚、一枚、横に引いて開けようとする。呆れた市長の秘書が「全部引き戸だと思っているのかしら……科学者のくせに」と言う。ギャグと言ってしまえばそれまでだが、エリンの人の好さと切羽詰まった際の人間の行為のおかしさがチャーミングに炸裂する。

 監督は『ブライズメイズ』のポール・フェイグ。クライマックスで盟友アビーを救うべく決死の行動に出るエリンの雄姿を描いて申し分なし。映画で男同士の友情や愛情が描かれることは多いが、女同士の友情がコミカルにすっきりと描かれることはかなり稀だ。数ある大ヒットSFコメディーを、続編というスタイルで彼女たちが征服して行ってくれたらと想像して一人悦に入る。
                              (内海陽子)

ゴーストバスターズ(2016)
8月11日(木・祝)―14日(日)先行公開!
8月19日(金)全国公開!
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2016年 アメリカ映画/コメディ・ホラー・アクション/116分/原題:GHOSTBUSTERS/監督:ポール・フェイグ/出演・キャスト:メリッサ・マッカーシー(アビー・イェーツ).クリステン・ウィグ(エリン・ギルバート).ケイト・マッキノン(ジリアン・ホルツマン).レスリー・ジョーンズ(パティ・トラン).チャールズ・ダンス。マイケル・ケネス・ウィリアムズ、クリス・ヘムズワースほか/
公式サイト /http://www.ghostbusters.jp//

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