エリック・クラプトン~12小節の人生~とは

エリック・クラプトンの波乱の人生 
 ミュージシャン、エリック・クラプトンの波乱の人生を、ふんだんなアーカイブ映像を盛り込んで描いたドキュメンタリー映画。

 クラプトンの母は、彼をイギリスに残してカナダに渡り、彼は祖父母に育てられる。だが、突然帰国した母は、母の愛を求める彼を拒絶。激しい怒りと孤独に苛まれたクラプトンは、ラジオで聞いたブルース・ギターの世界にのめりこむ。自らもギターを弾くようになり、模倣のに明け暮れる日々。ミュージシャン、エリック・クラプトンの誕生である。

 やがて、”ヤードバード”を皮切りに、”ジョン・メイオール&ブルース・ブレイカーズ”を経て、伝説的バンド”クリーム”を結成。一時代を画したが、方向性の違いやメンバー同士の不破により脱退。共にブルースを追求する仲間を求め、ブラインド・フェイス、デレク&ドミノズ等のバンドを転々とする。

 その頃、親友ジョージ・ハリスンの妻パティ・ボイドへの報われぬ愛に悩むが、失恋に終わる。追い打ちをかけるように祖父、盟友ジミ・ヘンドリックス、デュアン・オールマンがなくなり、彼はドラック中毒、アルコール中毒に陥る。

 長い隠遁生活を経て復帰を果たしたかに見えたクラプトンだったが、ステージで観客に向かって悪態をついたり、人種差別発言が問題となったりと荒んだ日々が続く。80年代初頭、ようやく本調子を取り戻し、新たな作風が”レイドバックサウンド”として評価される。だが、平穏な日々を取り戻した彼を待っていたのは、まだ4歳だった最愛の息子コナーの事故死だった…。

エリック・クラプトン~12小節の人生~ 映画レビュー

赤裸々に描かれる天才ミュージシャンの真実
 ジョージ・ハリスン、ジミ・ヘンドリックス、B・B・キング、さらに若かりし頃のローリング・ストーンズ、ビートルズ、ボブ・ディラン。何処から探してきたのかと驚くばかりの貴重なアーカイブ映像の数々。クラプトンの人生と60~70年代の音楽シーンが交錯し、その時代の興奮を追体験するかのような感覚に浸れる。当時のロンドンの街並みが映り、クラプトンと周囲の人々の姿が映し出されると、なんだかタイムスリップしたかのようだ。

 クラプトンが参加した、ビートルズの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」や名曲「いとしのレイラ」の録音風景なども、伝説の誕生を目の当たりにし、体の芯が熱くなるような興奮を感じさせる。

 また、「いとしのレイラ」の背後にあったパティ・ボイドへの報われない恋や、グラミー賞を受賞した「ティアーズ・イン・ヘヴン」が最愛の息子を失った直後に創られた曲であり、悲しみに打ち勝っての完全復活だったという彼の人生の秘められた真実が直截に語られているのも凄い!

 監督のリリ・フィニー・ザナックは、アカデミー賞を受賞した「ドライビング Miss デイジー」の製作者で、クラプトンが音楽を担当した「RUSH/ラッシュ」で監督デビューした人。クラプトンとは25年来の友人であり、その彼がクラプトンにロングインタビューし、率直に赤裸々に語られた真実を、私的な日記や手紙、デッサン、貴重なプライベート映像をふんだんに盛り込んで映像化。その時々の心情をクラプトン自身がナレーションで語る。描かれる本人が完全に内面をさらけだし(何しろ、クラプトンが麻薬を吸う映像まであるのだ!)、描かれる一人の男の魂の軌跡…。

 人生の苦難の数々に傷ついた孤独な魂の彷徨はまるでブルースのように哀しみを湛える。それゆえに、ようやく自分の居場所を見つけた現在の彼の安らぎに満ちた姿もまた、我々にもう一つの”人生の真実”を伝えてくれる。

(渡辺稔之)

エリック・クラプトン~12小節の人生~ 作品情報
© BUSHBRANCH FILMS LTD 2017
配給:ポニーキャニオン/STAR CHANNEL MOVIES
11月23日(金・祝)、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

原題:Eric Clapton: Life in 12 Bars 
2017年 イギリス映画 カラー 135分 
監督:リリ・フィニー・ザナック
製作:ジョン・バトセック編集クリス・キング、ポール・モナハン 
音楽:グスターボ・サンタオラヤ 
出演:エリック・クラプトン、B・B・キング、ジョージ・ハリスン、ジミ・ヘンドリックス、パティ・ボイド