『死霊館 エンフィールド事件』映画レビュー

ワンショットの流麗なシーンに唖然 後半はアクション多め、恐怖少なめ

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED
(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED
『ワイルド・スピード SKY MISSION』もいいけれど、ジェームズ・ワン監督作品なら、ホラーが一番見たい。『死霊館』シリーズの前作、『アナベル 死霊館の人形』のときは、『ワイルド・スピード』のせいで忙しかったのだろう。自分ではやらず、監督はジョン・R・レオネッティに任せた。ジェームズ・ワン監督の撮影監督だった人である。そのせいかちょっと期待はずれだった。

今回の『死霊館 エンフィールド事件』は、一作目の『死霊館』と同じく、実在の超常現象研究家のエド&ロレイン・ウォーレン夫妻が遭遇した怪奇現象を描く、いわば実録ホラーだ。英国ロンドンのエンフィールドの、片親家族の家で様々な怪奇現象が起こる。そこで現象を精査するためにウォーレン夫妻が駆り出される。

ジェームズ・ワン監督のホラーの何がいいのか。まずは、流麗なカメラワーク。ワンショットでいくつものシーンをつないでいく。ワンショットで撮影しているのが信じられない出来で、その魔法がかった描写に唖然とさせられる。効果を狙っているとしたら、怖さではない。上質でよどみのない見せ方のせいで、いい気分にさせてくれることか。単純に面白いし、こまごまとした美術も見事だ。

怖さのほうはどうなのか。『死霊館 エンフィールド事件』で描かれるのは、ポルターガイスト現象だ。物が動く、飛び回る、人も空中に浮かぶ、音がする。そんな大掛かりなシーンはそれほど怖くない。怖いのは、小道具や「old man」の歌、家の造作、本物のテープなどだ。

クライマックスはアクション映画さながらだ。相手がダイナミックに動くポルターガイストだからなのかもしれない。次第に、ホラー映画とはいえ、愛する人を守るための闘いの映画に変化する。現象の正体は、私たち日本人には縁遠い存在でもある。それも怖さが薄い理由だろうか。文化の違いだからそこは仕方ないのか。

(オライカート昌子)

死霊館 エンフィールド事件
2016年7月9日(土)新宿ピカデリーほか全国公開
2016年 アメリカ映画/ホラー/134分/原題:THE CONJURING 2/監督:ジェームズ・ワン/出演・キャスト:ヴェラ・ファーミガ(ロレイン・ウォーレン)、パトリック・ウィルソン(エド・ウォーレン)、フランシス・オコナー(ペギー・ホジソン)、マディソン・ウルフ(ジャネット・ホジソン)ほか/配給:ワーナー・ブラザース
公式サイト https://warnerbros.co.jp/c/movies/shiryoukan-enfield/

関連リンク

『死霊館』映画レビュー(内海 陽子)

『死霊館』映画レビュー(オライカート昌子)