戦火の馬の画像
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『戦火の馬』は風格といい、重厚さといい映画らしい映画であり、スティーブン・スピルバーグ監督の本領が効果的に発揮されている映画でもある。スピルバーグ監督の本領が何かといえば、人間愛。だけどこの作品では愛の対象は人間だけでない。馬もだ。

第一次大戦を背景にした作品が同時期に3本公開されている。『ヒューゴの不思議な発明』も第一次世界大戦は背景の一部だし、『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』は大戦前夜が描かれる。この3本を見れば、1910年代の歴史を俯瞰できるだろう。

その中でも、戦争を真正面から描いているのが『戦火の馬』だ。前半は、貧しい丘陵地帯にはもったいないサラブレッドのジョーイと、小作人の息子アルバートとの関係が描かれる。雄大な自然のもと、牧歌的な世界はとても美しく心惹かれる。その後、戦火が訪れたことで、アルバートと引き離され、数奇な運命をたどることとなる。

第一次世界大戦は、人間にも極度に過酷な戦いだったが、馬の扱いはさらに残酷度を増す。動物愛護どころか、人間だって毒ガスが行き交う戦場では人間扱いされていないのだから。そんな中では、ただ生きていることだけでも人間にも馬にも相当難しいことだ。命の瀬戸際が何度も訪れる。

スピルバーグ監督の指揮は、戦場の厳しい現実も余すところなく表現しながら、それでも残る人間味や暖かさを描き尽くす。それが、見ている間も、見終わったあとも、密度の濃い感動を与えてくれる。スケールの大きさとそれに見合う爽やさを抱ける映画を見るのは、本当に久しぶりだ。それがとても新鮮なのだ。必見作。
(オライカート昌子)

戦火の馬
2011年 アメリカ映画/146分/監督:スティーブン・スピルバーグ/出演:出演: ジェレミー・アーヴァイン、エミリー・ワトソン、デヴィッド・シューリス、ピーター・ミュラン、ニエル・アレストリュプ、トム・ヒドルストン、パトリック・ケネディほか/配給:ディズニー

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