©2011 Blueprint Pictures (Seven) Limited, The British Film Institute and Film4
©2011 Blueprint Pictures (Seven) Limited, The British Film Institute and Film4
サイコパスが愛おしい。そんな不思議な気分にさせてくれる映画が『セブン・サイコパス』である。長編デビュー作、『ヒットマンズ・レクイエム』が絶賛されたマーティン・マクドナー監督最新作。

7人の社会病質者(サイコパス)が勢ぞろいするサスペンスコメディなのだが、愉快で愛おしい気分にさせてくれるといえ、この映画に出てくるサイコパスは決して生ぬるいものではない。条件をちゃんと満たした正真正銘のサイコパスがたちが跋扈し、流血シーンも少なからず登場する。社会規範を自由自在に逸脱し、自分ルールで動くサイコパス精神がみなぎった作品なのだ。

コリン・ファレル演じる映画の脚本家マーティが、自分の書く脚本にセブン・サイコパスと題名をつけてみたものの、サイコパスの知り合いがいるわけでもなく、なかなか筆も進まない。彼の才能を信じる親友のビリー(サム・ロックウェル)が、助けるつもりで新聞にサイコパス求むという広告を出してしまい、気づくとマーティの周りにたくさんのサイコパスが集まり出す。

さらに、ビリーは犬の誘拐ビジネスに手を出し、マフィアのボスの愛犬を盗んでしまうことに。ストーリーはマフィアとを巻き込み、取り返しのつかない方向へと進んでいく。

虚と実、劇中劇、語りで見せる映画のシーンなどが、職人芸のように混ぜ合わされ、煙にまかれたような、それでいて妙に腑に落ちる気分になる。味のあるせりふや、映画愛に満ちたシーンがみどころでもある。

なぜ、社会病質のサイコパスでも愛おしく感じるのか、それは主人公のマーティがそう感じるようになっていくからかもしれない。サイコパスであろうとなかろうと、人間には長所もあれば欠点もある。サイコパスだから怖ろしいと、特別扱いするのはどうなのだろうか。

恐ろしい犯罪がたくさん披露されるのに、映画の後味はかなりいい。まるで人情話を見たような気分になる。コリン・ファレル、サム・ロックウェル、そしてウディ・ハレルソン、クリストファー・ウォーケンの名人級の演技もとことん楽しんで欲しい。(オライカート昌子)

セブン・サイコパス
2012年 イギリス映画/コメディ・クライム/110分/原題:SEVEN PSYCHOPATHS/監督マーティン・マクドナー/出演・キャスト:コリン・ファレル(マーティ)、サム・ロックウェル(ビリー)、ウディ・ハレルソン(チャーリー)、クリストファー・ウォーケン(ハンス)、トム・ウェイツ(ザカリア)、アビー・コーニッシュ(カーラ)、オルガ・キュリレンコ(アンジェラ)、マイケル・ピット、 マイケル・スタールバーグほか/配給:クロックワークス
11月2日(土)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
『セブン・サイコパス』公式サイトhttp://7-psychopaths.jp/