イノセント・ガーデン 映画レビュー その2

(c)2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
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イノセント・ガーデンは、ミステリアスでエロティシズムな雰囲気がスクリーンから溢れでてきて、クラクラするほどの映画だった。限られた舞台、限られた登場人物が繰り広げる、衝撃的なストーリー。なのに美しい。

時折、息を止めてしまうほどの緊張感にあふれたシーンに出会い、吸い込まれていくようだ。ピアノの連弾のシーン。あるいは、バスルームの場面などだ。

唯一の理解者だった父を亡くした18歳のインディア(ミア・ワシコウスカ)。母(ニコール・キッドマン)との間には愛情もなく、心も通じていない。そこにずっと行方知らずだった父の弟(マシュー・グード)がやってくる。

父の葬儀から間もないのに、アイスクリームを食べに行こうと無邪気に言い放ち、叔父とオープンカーで出かける母。一人で葬儀辞典を読み耽るインディア。時代錯誤的な映画デザインもあって、どこかチグハグで非現実的なムードで映画は、展開していく。
そこに、大叔母が現れる。大叔母を演じるのは、かのジャッキー・ウィーヴァー。『アニマル・キングダム』と『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー助演女優賞にノミネートされた実力派だ。

彼女が現れたところから、映画は思いがけない方向へと大きく舵を切る。その落差を一人で担うのだから、ジャッキー・ウィーヴァーは、恐ろしいほどの底力と存在感を持った女優なのだと感嘆してしまう。

監督は、『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク。そして、この作品を書いたのは、『プリズン・ブレイク』シリーズで主役を演じ、一躍有名となったウェントワース・ミラーだ。いったい彼はどんな精神世界を持っていて、こんなストーリーを思いつくなのだろうか。

(c)2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
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ただひとつ言えること。どの家にも、どの家族も、他人には窺い知れない秘密を抱えているのだろう。家族だけでなく、個人でもそうだろう。私も。きっとあなたも。

秘密を抱えた心のなかの後ろめたさに似た疼きを、イノセント・ガーデンは優しく押すように思い出させはしないだろうか。(オライカート昌子)

イノセント・ガーデン
2013年 アメリカ映画/99分/原題:STOKER/監督:パク・チャヌク(『JSA』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』/脚本:ウェントワース・ミラー(『プリズン・ブレイク』シリーズ/出演:ミア・ワシコウスカ(『アリス・イン・ワンダーランド』)、ニコール・キッドマン(『めぐりあう時間たち』『アイズ・ワイド・シャット』)、マシュー・グード(『シングルマン』) ほか/配給:20世紀フォックス

5月31日(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネマカリテ他 全国ロードショー
公式サイトhttp://www.foxmovies.jp/innocent-garden/