© 2017Twentieth Century Fox Film Corporation
「X-MEN」シリーズには、他のマーベル作品にはない魅力がある。登場人物も多いし、描かれる世界や時間軸も様々。『X-MEN:フューチャー&パスト』((2014))のように、過去や現在や未来を自在に行き来する独特な世界観は、何が出てくるかわからないおもしろさがある。「X-MEN」シリーズだけで、10作品もあるので、考えられる限りのヴァリエーションで描かれている。さもないと、物語が出尽くしてしまう。

『LOGAN/ローガン』は、その中でも断トツの異色作だ。アメコミ映画初のロードムービーで、人情ストーリー、ホームドラマの要素もあり、渋みの中に絶妙な温かさと凄絶さがミックスされている。ヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンは、これが最後。そういう意味では、最高のフェアウェルムービーだ。

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2029年のメキシコ近くの荒野で、ウルヴァリンことローガンは、雇われリムジンの運転手をしている、身体は以前のような頑健さを失い、酒を飲んでは喧嘩をし、荒みは精神にまで到達しているようだ、でもローガンはローガンであり、年老い、追跡されているチャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX(パトリック・スチュワート)を仲間のキャリバンと共に養い、匿っている。ある日、謎の少女を連れた女性が、ローガンに接触してくる。少女も追われている。頼れるのは、ローガンだけなのだ。ローガンは、チャールズとともに彼女を送り届ける旅にでる。

少女ローラの正体や性格が明らかになっていく過程がスリリングだ。全くしゃべらなかった彼女が突然しゃべりだすと、映画のリズムが変る。スクリーンに捕らわれて、前のめりになってしまう、緩急が心地よい。寄せ集めのローガン、ローラ、チャールズの3人が次第に、家族のように形を整え始める様子も見事。だが、別れは突然にやって来る。それは、どの家族でも友人でも同じこと。

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強く感情を揺さぶってくる理由の一つに、ローガンやローラやチャールズの人間くささもあるが、極悪連中のしたたかさと強さもある。これほど悪役が際立つ映画も珍しい。悪役が仕事をすればするほど、どの映画も輝きを放つ。

とはいえ、この作品は何でもありの「X-MEN」シリーズだ、もしかしたらまだ続くのかもしれない。違うタイムラインで、新たなヒュー・ジャックマンのローガンストーリーが描かれるのかも。だったとしても、この映画の凄みは衰えない。

(オライカート昌子)

LOGAN/ローガン
2017年6月1日(木) 全国ロードショー
【スタッフ】監督:ジェームズ・マンゴールド【キャスト】ヒュージャックマン、パトリック・スチュワート、ダフネ・キーン
公式サイト 
http://www.foxmovies-jp.com/logan-movie/