『LUCY/ルーシー』映画レビュー その2

(c)2014 Universal Pictures
(c)2014 Universal Pictures
リュック・ベッソン監督の新作映画、『LUCY/ルーシー』は、荒唐無稽の極みを追求したエンターテイメント作品に見えるかもしれない。一人の平凡だけど抜群の美貌を備えた女性、ルーシーが、脳細胞へのアクセス能力を得ることで次第に変わっていく。それをスタイリッシュなアクション満載映画に仕上げているのだから。

普通の人間は脳の10パーセントしか使っていないらしい。ところがルーシーは、20パーセント、30パーセントと徐々に潜在力を発揮し始めて、ついには90パーセント、100パーセントまで能力を伸ばしていく。そのレベル別変化を細かく詳しく見せてくれるところが、一番の注目ポイントだ。

今まで使いこなしてこなかった部分を活用し始めたら、それは進化になる。 人間の進化を真面目にかつ、かっこいいアクションとともに映画化したのが、『LUCY/ルーシー』なのだと思う。というのも、今現在、人間も次の進化の段階に片足のつま先をかけようとしているのではないかと、かすかに思っているからなのだが、『LUCY/ルーシー』で、モーガン・フリーマン演じる脳科学者が言っているのと同じく、実証はできない。

だがインターネットの影響で、今まで手に届かなかった情報を瞬時に手にできるようになり、世界は平坦化し近くなり、それが私たちの脳にも少しずつ変化をもたらしつつあると思う。もう少し経てば目に見えるようになるかもしれない。

ルーシーの脳へのアクセス能力が50パーセントを超え始めると、彼女は自己も思考も解き放ち、存在からして別物になってくる。その様相はリュック・ベンソン監督の想像力の限界を試すようだ。垣根を取っ払った宗教的真髄の精神描写を突き詰めようとしているかのようでもある。

流れるような切れのあるアクションの連続に気分を高揚させていたとしたら、かすかに違和感を感じ始めるかもしれない。決して退屈はしないはずだが。『LUCY/ルーシー』は、アクション映画の衣をかぶっているけれど、志ははるかに高い映画なのだ。   (オライカート昌子)

『LUCY/ルーシー』映画レビュー その1

LUCY/ルーシー
8月29日(土)、TOHOシネマズ 日本橋ほか全国公開
PG12
LUCY/ルーシー公式サイト http://lucymovie.jp/