『君の生きた証』映画レビュー

(c)2014 Rudderless Productions LLC. All Rights Reserved.
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どんでん返しや、意外な結末の映画が好きだったら、外せない映画がある。『ユージュアル・サスペクツ』や『シックスセンス』などだ。世界観がひっくり返り、劇場を後にしたときまで、揺さぶりが酔いのように残っている。楽しいような奇妙な気分だ。残念なことに、映画をいくつも見ていると、そう簡単には引っかからなくなってくるのだけれど。

『君が生きた証』は、どんでん返し映画のように、予期しないところで驚くような展開がある。どんな映画通でも、真相を途中で見破ることはできないと思う。だけどそれは、楽しみのためのどんでん返しではなく、考えさせたり、味わい深さのためのもので、普通のその種の映画とは、目的が違うようなのだ。

やり手の広告マンのサムは、離婚して悠々自適な生活を送っていた。ある日、大学生の息子を無理やり昼食に誘う。ところが、約束のレストランに息子は現れない。訪れたのは、人生最大の悲劇だった。その出来事を受け入れられなかったサムは、荒みきった生活を送るようになってしまう。

酒を飲み、ペンキ塗りの仕事をしながら、世捨て人のようにボートで暮らしていたある日、元妻が息子の遺した荷物を持ってやってくる。再婚をして子供を授かった元妻は、すでに新しい生活に足を踏み出していた。荷物の中にあった息子が作った曲を聴いたことで、サムの生活もようやく動き出す。

うまくいきそうなところで、全てが破綻してしまうことも起こり得る。それが、人生だ。受け入れがたい事だってある。そんな、苦味の効いた映画を監督したのは、個性派俳優として定評のあるウィリアム・H・メイシー。本人も、サムがバンドを組んで歌うことになる酒場の主人役で出演している。ちなみに原題の『Rudderless』は、バンドの名前。

人生最大の悲劇を描いているといっても、どことなくコメディチックで軽みがある。そのあたりが、バンドが奏でる残酷な運命の中の一筋の光のような音楽とともに、この映画の魅力となっている。

(オライカート昌子)

君が生きた証
2015年2月21日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町 
新宿シネマカリテほか全国ロードショー
君が生きた証 公式サイト http://rudderless-movie.com/