北のカナリアたちの画像
(C)2012『北のカナリアたち』製作委員会
『告白』の原作でも知られる湊かなえの「往復書簡」の一編「二十年後の宿題」を『大鹿村騒動記』の阪本順治監督が映画化。主演の吉永小百合をはじめ、森山未來、宮崎あおい、松田龍平、小池栄子、満島ひかり、勝地涼ら豪華キャストが揃った。日本最北の島を舞台に、かつての教え子に殺人容疑がかかっていることを知って20年ぶりに当時の生徒たちに再会した教師と、生徒たちそれぞれの胸中を描く。

サスペンスでありながら、いい意味で泣ける壮大な人間ドラマに仕上がっている。人物の大きな動きは少なく、殆ど会話のみの構成。が、現在と過去が頻繁に入れ替わる時間軸の交叉、場面展開の多さ、そして何より登場人物たちの静かで激しい心の動きのせいで、大きな波がうねるように物語が展開していくのが分かる。

吉永小百合演じる教師のはるは、20年前に起きたある悲しい事件を機に、生徒たちの前から姿を消した。その事件が生徒たちにもたらした傷は大きく、誰もが自分のせいだったと密かに苦しんでいる。そしてはるもまた、自責の念を抱いている。

北のカナリアたち
(C)2012『北のカナリアたち』製作委員会
6人の生徒たちの苦しみ~先生の夫の屈折した内面~夫婦間の距離などが描かれ、人間の弱さや強さ、業を反映させた様々な感情が絡み合い、ドラマは激しい起伏を見せる。仲村トオル演じる警官の登場は一見唐突に見えるものの、はるの寂しさを象徴した存在として重要な役割を果たしている。終盤近くで、殺人容疑者である最も純粋な生徒=”のぶちゃん”がようやく姿を現し、物語は大団円へと向かっていく。彼を演じる森山未來は、少ない登場ながら皆を繋ぐ重要なキャラクターとして熱演を見せ、涙を誘う。

小さな島の小さな学校ならではの絆を感じさせる作品。閉ざしていた心を再び開き、離れていた友情が再び繋がっていく様や、都会では生まれないであろう物語に、羨ましさを感じた。寂しさ漂う北海道の雪景色も主役。    (池辺麻子)

北のカナリアたち
11月3日(土)全国東映系ロードショー
公式サイト http://www.kitanocanaria.jp/