『ミニオンズ』映画レビュー

(C) 2015Universal Studios.
(C) 2015Universal Studios.
究極のなごみキャラであり、ゆるキャラのミニオンズが大活躍する映画なら、たとえ嫌なことがあったとしても、一瞬にして笑顔にしてくれるだろう。涼しい映画館の大画面で、ミニオンズのアドベンチャーを楽しめるとは、なんとも極楽な夏休みである。

『怪盗グルー』シリーズでは、スクリーンを賑やかしていただけだったのに、今ではハンカチやらペンケースやら、キャラクター商品も多数見受けられる人気キャラに成長。でも、彼らがどんなに人気があろうと、映画の主役に起用するというのは、ちょっと危険で大胆な試みだったと思う。

だって彼らは日本語も英語も、人間の言葉はしゃべらない。無声映画のキャラクターのように、動きや表情で表現するしかない。ところが、それが幸いしたのだろう。彼らのかわいらしい声や動きに魅入られてしまう。ミニオンたちの無邪気で健気で、ちょっと間が抜けた行動は、言葉がなくても、いやないからこそ、共感を呼ぶ。

映画はミニオンズZEROであり、彼らが地球に現れた(生まれた)ところから始まる。オープングでは壮大な歴史が描かれる。悪漢を見つけて、悪に仕えることが彼らの生きる目的だ、ボスは、悪ければ悪いほどよい。だが、そんな極端な切望はなかなか叶えられない。見つけたと思っても、すぐに消えてしまう。悪は滅びやすいようだ。

ボスがいないと、ミニオンズは滅亡の瀬戸際まで追い詰められてしまう。生き残りをかけて、ケビン、スチュワート、ボブの三人が、最強最悪のボスを探す旅にでる。時代は1960年代。テレビは白黒、ビートルズが人気で、エリザベス女王は若かったころだ。

散りばめられたアクション、笑い、ちょっとしたセンスは標準以上。彼らは、最強最悪のボスを探そうとしていたけれど、残念ながら彼ら自身は悪ではない。悪にもなれない。悪にもグラデーションがあるのだ。

彼らがやっと一番ふさわしいボスに出会えたときには、ふるさとに帰ってきたようなホッとした気分になる。結局、誰もが、自分に見合ったものを見つけるのだ。見合ったものしか見つけられないけれど。

(オライカート昌子)

ミニオンズ
2015年7月31日よりTOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー
配給;東宝東和
公式サイト http://minions.jp/