『エイリアン:コヴェナント』映画レビュー

宇宙船の船内をリアルに描く映画が増えてきた。今年だけでも、ジェニファー・ローレンス、クリス・ブラッド主演の『パッセンジャー』(2016)やジェイク・ギレンホール主演の『ライフ』(2017)などがある。

危険と隣り合わせでありながら生活感にあふれ、宇宙で暮らすってこういうことなんだな、という想像を膨らませてくれる。今回の『エイリアン:コヴェナント』も、宇宙に住むことをリアルに疑似体験させてくれる映画だ。ちなみにコヴェナント(約束)とは船の名前。

コヴェナントに搭乗しているのは、約束の地へと向かう2000名の入植者たちと14名のクルー。アンドロイドのウォルター(マイケル・ファズベンダー)は、人間が冷凍冬眠している間、船の管理を行っている。冒頭で船に危機が訪れる。船長は助からず、早々に船長交代となる。選出された新船長は、大きな間違いを犯してしまう。

見知らぬ星を探検することになったクルーたちは、一人また一人とエイリアン新種の毒牙にかかっていく。ヒタヒタと忍び寄り増大していく恐怖は、『エイリアン』(1979)を思い起こさせる。『エイリアン:コヴェナント』はあのようにシンプルにこわがらせてくれるだけでなく華麗な世界観が特徴だ。気持ち悪さを通り越して、恐怖描写がおどろおどろしい美にも感じられるほどだ。御年79歳のリドリー・スコット監督のなんというエネルギーと情熱だろう。叙事詩的な世界観の壮大さは、ため息がつくほどだ。

最後まで見ると、リドリー・スコット監督の生涯をかけた意図が透けて見える。それは、今年新作が公開される『ブレード・ランナー』(1982)とも関連し、見えてくるのは大きな円環だ。人間とは何か、私たちは何を作り上げてしまうのだろうという新たな恐怖が湧き上がってこないだろうか。キーワードはアンドロイド。

シガニー・ウィーバーが演じた『エイリアン』(1979)のリプリー以来、エイリアンシリーズは、女性科学者が映画を引っ張っていくのが伝統であり、それは、『エイリアン』シリーズ前回の『プロメテウス』(2012)のエリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)、今回のダニエルズ(キャサリン・ウォーターストーン)にも引き継がれている。

今なお、圧倒的な存在感でハリウッドの一角で輝くシガニー・ウィーバーに続き、ノオミ・ラバスも唯一無二の優れた女優として花開いているのを見ると、キャサリン・ウォーターストーンの今後の活躍も大いに期待される。だが、『エイリアン』リーズはまだ終わっていない。次回作でリドリー・スコットはどのように円環を閉じるのか、ダニエルズは果たして生き残れるのか。ワクワクはまだ続く。

(オライカート昌子)

エイリアン:コヴェナント
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved
監督:リドリー・スコット
脚本: ジョン・ローガン
ダンテ・ハーパー
出演: マイケル・ファスベンダー デヴィッド/ウォルター
キャサリン・ウォーターストン ダニエルズ
ビリー・クラダップ オラム
ダニー・マクブライド テネシー
デミアン・ビチル ロープ
カーメン・イジョゴ カリン
エイミー・サイメッツ ファリス
ジャシー・スモレット リックス
キャリー・ヘルナンデス アップワース
ナサニエル・ディーン ハレット
アレクサンダー・イングランド
ベンジャミン・リグビー
ウリ・ラトゥケフ
ジェームズ・フランコ
(クレジットなし)
ガイ・ピアース
(クレジットなし)
配給:20世紀フォックス
2017年/アメリカ映画/122分/SF/ホラー

2017年9月全国ロードショー
公式サイトhttp://www.foxmovies-jp.com/alien/

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