『アクアマン』映画レビュー

『アクアマン』の監督は、あのジェームズ・ワン。『ソウ』をサプライズヒットさせ、華麗な初監督デビューを飾り、『ワイルド・スピード』で初アクションに挑戦、大ヒットに導いた。そんなジェームズ・ワンが、DCコミック原作映画の新参、『アクアマン』の監督に選ばれたということで、楽しみにしていた人も多いはずだ。

ジェームズ・ワン監督は、見せ方が巧みだ。『ワイルド・スピード』もそうだったが、情報量が多い映画でも、スムースに物語世界に没頭させてくれる。ジェットコースーターに乗っていることを意識させないぐらいに。

情報に関しては『アクアマン』にはとてつもない量がある。冒頭の5分ほどで、作品世界、背景、『アクアマン』ことアーサーの父と母の出会い、母との別れ、アーサーの成長が描かれる。時の流れを流麗にワンカット風に見せるところは、ジェームズ・ワン監督が最も得意としているところ。

天敵の出現、海底からの使者、海底世界の確執、宝探しと、普通の映画の何倍ものストーリーを伝えながら、切れのいいアクションが挟まれる。一気に見せてしまう手腕の確かさには惚れ惚れしてしまった。

人間の父と、海の世界の女王との間に生まれたアーサーは、海の中でも息ができる上、海の生き物とも意思の疎通ができる特殊能力を持っていた。一方海中世界(アトランティス)では、海中を汚染させる陸上の世界を征服し、一つの世界にしようとする若き王オームが、海中の七王国の覇権を手にしようとしていた。それを阻止すべく、メラとオームの片腕バルコ(ウィレム・デフォー)が、手を組み、もう一人の王子、アーサーに接触してくる。アーサーはオームをとめることができるのか。

物語の伝え方が上手いと思うのは、計算され尽くしたストーリー展開と共に、オマージュの量だ。基本にアーサー王伝説、そして人魚姫。王女メラ(アンバー・ハード)は、どう見たって『リトル・マーメイド』のアリエルでしょ)

『インディ・ジョーンズ』風でもあり、一つ一つのヒントが次のヒントにつながっていくのは、『レディ・プレイヤー1』にも似ている。屋根の上を走っていくアクションは定番だが、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』のシーンを思い出す人も多いだろう。

海と言えば、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ。『パイレーツ・オブ・カリビアン』の有名なシーンの再現も、もちろんある。オマージュは、私たちの潜在意識に眠るたくさんの映像の記憶にアクセスし、作品の持つ豊穣さを倍増してくれる。

アメコミ・エンタメ映画と侮るなかれ。『アクアマン』は、極めて豊かで懐かしい上、情報量の多さにも惑わない、楽しい映画なのだ。

(オライカート昌子)

アクアマン
(c)2018 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & cDC Comics
2019年02月8日(金)より公開中
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/aquaman/