たとえば、こんな事だろう。

政府が、「ケータイ料金は4割下げる余地がある」と言う。

国民は拍手喝采するが、これは選挙や消費税導入を前に、国民の支持を得たい政府の目くらまし。

こんな目くらましが、『アンダー・ザ・シルバーレイク』にはゴロゴロと転がっている。

左のオリジナル・ポスターだってそうだ。

タイトルを流し込んだだけのデザイン。

街中で初めて目にした人はチンプンカンプン。

暫くして、ははーん、「アンダー・ザ・シルバーレイク」と読むのかぁ。。。

ほらね。監督の狙いはそこにある。

目くらましの暗号、サブリミナル、デジャブがてんこ盛り。

だから物語も奇想天外だ。

引き籠り男が、一夜にして消えたマリリン・モンロー似の美女を追う。

決死の覚悟で「ロサンゼルス」を隅から隅まで駆け巡る。

人を惑わす快楽の地、ロサンゼルス。

スムースに物事は進まない。

劇中には、イヌ殺しの警告、季節外れの打上げ花火、深夜の人喰いオンナから吸血鬼伝説まで、あれやこれやと目くらましが現れる。

消えた美女のアパートに残された記号とは。

フリーウェイの電光掲示板に点滅する暗号とは。

オンナが着た、クリムトの「接吻」に似たデザインの意味とは。

よそ見をしたら、ロサンゼルスというボードゲーム上で迷子になってしまうかのようだ。

映画はやがて、大富豪失踪事件から「正体」が見えてくるのだが。。。

監督は、ホラー映画『イット・フォローズ』(2015年)を手がけたデヴィッド・ロバート・ミッチェル、44歳。

呪いに憑かれた女生徒が、イット(それ)から命からがら逃げ回る100分間の傑作で、私はその年のベストワンに挙げた。

この『アンダー・ザ・シルバーレイク』では、立場が逆転、140分間追い回すことになるのだが、これまたスリラーの手法が際立っているから思わずニヤリとしてしまう。

『イット・フォローズ』が、ホラーの金字塔『ハロウィン』のジョン・カーペンター監督ふうとすれば、今回の『アンダー・ザ・シルバーレイク』は、『ボディ・ダブル』の監督、ブライアン・デ・パルマのテイストを感じさせる。

そこで、『ボディ・ダブル』(1984年)を再見してみた。

やっぱり、舞台はロサンゼルス。

売れない俳優が、夜ごと双眼鏡で隣人宅を覗き見している。

ある晩、トップレスで踊る美女を見つけ、一目惚れする。

男はその日からその女をロサンゼルス中、尾行するが、惨劇が待っていた。。。

双眼鏡、クルマ、金髪の美女、ハリウッドの丘、フリーウェイ、秘密の地下パーティ、ドラキュラ伝説。。。。。。そして全編を飾る耽美な音楽。

ヒッチコック映画でお馴染みの作曲家、バーナード・ハーマンを思わせる気だるくも耽美な調べも共通している。

こうなると、『アンダー・ザ・シルバーレイク』は、デ・パルマやヒッチコック映画(とくに『めまい』)のオマージュに違いない。

この『アンダー・ザ・シルバーレイク』には、大勢のクセモノが登場するが、この奇想天外な話の本質を突く老人のセリフにも注目したい。

「世の中のテレビ、映画、音楽、小説、アートに至るまで、すべてのものに暗号が隠されている。その暗号の意味を知る者はほんの一握りの特権階級の奴らだけなのさ。その他大勢の奴らは意味もわからず踊らされ洗脳されているだけ。今、そしてこれから世の中に何が起こるのか、暗号で知らされているのは、ほんの一握りの奴らだけなんだよ」

このセリフは、今でも頭の中に引っかかっている。

アメリカの新大統領が就任後、決まって同じ質問をするらしい。

宇宙人はすでに地球にいるのか?

空飛ぶ円盤はどこに回収されているの?

ケネディを撃った真犯人は誰なんだい?

『世の中、目くらまし、暗号、サブリミナルで溢れ、本質は隠されているのさ』

こんな監督のメッセージが残る映画だ。

けっして見逃してはいけない!

(武茂孝志)

アンダー・ザ・シルバーレイク

©2017 Under the LL Sea,LLC

スタッフ

監督&脚本:デヴィッド・ロバート・ミッチェル

キャスト

アンドリュー・ガーフィールド「ソーシャル・ネットワーク」

ライリー・キーオ「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

パトリック・フィスクラー「マルホランド・ドライブ」

ゾーシャ・マメット「キッズ・オールライト」

キャリー・ヘルナンデス「ラ・ラ・ランド」

トファー・グレイス「インターステラー」

配給:ギャガGAGA★

2018年/アメリカ/140分

2018年10月13日(土)より新宿バルト9、UPLINK渋谷にてロードショー