ジャンゴ 繋がらざる者タランティーノ監督は、観客を別世界へと誘う手腕を、ますます洗練させているようだ。大胆に、そして手際よく。

前作の『イングロリアス・バスターズ』は第二次大戦が舞台。今回の、ジャンゴ 繋がれざる者が繰り広げられるのは、アメリカの南北戦争前夜。マカロニ・ウエスタンの情緒を借りながら、実際にはディープサウスを舞台に、奴隷たちの深刻な状況を生々しく描写する。

前半は、賞金稼ぎのストーリーに見せかけているが、実は騙しのコン・ゲーム。奴隷だったジャンゴが、ドクター・シュルツの教育によって、南部一のガンマンに変身を遂げる、ピグマリオン的ストーリーもある。

もう一つ奥に、北欧神話もあるのには驚いた。ジャンゴと、彼の生き別れた妻のブルームヒルダのことを、ドクター・シュルツは、ジークフリートとブリュンヒルデにたとえる。

幾つもの層を重なり合わせることで生まれた、作品の奥行きの深さは相当なものだ。そのせいか、当時のディープ・サウスにいるような、事件を目の前で観ているような錯覚すらおぼえる。

後半になるにつれ、エモーショナルな復讐譚と救出劇へと、作品は姿を変える。ハラハラ・ドキドキのコン・ゲームと繊細な心理描写を楽しんでいるうちに、壮大で血みどろ、壮絶なタランティーノ印の大団円を迎える。そのころには、映画を見入っていることすら忘れるぐらいだろう、と言ったら、大げさだろうか?

ジャンゴ 繋がらざる者のディカプリオぜひ付け加えたいのは、練り上げられた舞台装置以上に、7人ものアカデミー賞ノミネート俳優(そのうち二人、主演のジェイミー・フォックスは主演男優賞を勝ち取り、クリストフ・ヴァルツは助演賞を2回)を迎えた豪華さだ。

主演のジェイミー・フォックスは、ストイックな演技でマカロニ・ウェスタン以来のジャンゴ精神を蘇らせている。レオナルド・ディカプリオとサミュエル・L・ジャクソンの極悪コンビも、くっきりとしたキャラクター設計で壮観だ。

その中でも一人を選ぶとすると、ドクター・シュルツを演じ、本作でアカデミー助演男優賞を獲得したクリストフ・ヴァルツ。いつまでも心に残るであろう精緻なキャラクター。彼にもう一度会いたい、と思うぐらいなのだから、すっかり私はタランティーノの仕掛けにはまっている。(オライカート 昌子)

ジャンゴ 繋がれざる者
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