念願のレコードデビューに興奮を抑えきれないジャニーヌは、しかしジャケット撮影時、思いがけずキャメラマンからこう告げられる。「後ろ姿のほうが、ミステリアスでいい」。尼僧たるもの、人生の晴れ舞台においてもそれを謳歌することは許されない。そのときジャニーヌが浮かべた苦い微笑が、現実と理想の狭間で煩悶を続けた彼女の生涯を象徴していたのかもしれない。

雨に濡れたタイトなタンクトップ姿で女子サッカーに興じるジャニーヌは、肉弾戦の末に正面衝突した友人のアニーの頬を赤らめさせる。短髪でボーイッシュな彼女は、深夜、「ロミオとジュリエット」さながらバルコニーからアニーの部屋に忍び込み、初めて友の思慕に気づくような無頓着さがある。

演じるセシル・ド・フランスは両性具有を思わせるジャニーヌの危うい官能性をそのしなやかな身体にちらつかせながら、彼女に誠実な愛を注ぐピエールを無為にはぐらかした挙句、修道院に入る朝、強引に彼の唇を奪い、「これだけはやっておきたかったの」と破顔一笑の天真爛漫さを振りまき、私をときめかせる。

60年代、自分の居場所を求め、無軌道な彷徨を続けるジャニーヌの衝動を、フランスは息が詰まるような保守的な時代でもがく女性の魂の躍動として銀幕に息づかせる。教会の戒律に縛られて神妙に顔を俯かせる彼女より、修道院を訪問した娘たちの前でギター片手に唄い、キャンパスで大学生たちと煙草をくゆらせながら激論を交わすときのほうが、よほど活き活きしている。しかし、ジャニーヌの属する“世界”では、それは“傲慢”だ。

還俗後のジャニーヌは、教会から援助を得られることなく、失意にまみれる。人生に怖いものはない。そんな一点の曇りも感じさせないシスター・スマイルの晴れやかな歌声がもたらした栄光は、ジャニーヌに過酷な現実を容赦なく突きつける。そして私は、絶望の果てに彼女の噛みしめた諦観を、悲痛な敗北感とともに追想するのだ。
(増田統 )

■フランス/ベルギー映画/124分/監督:ステイン・コニンクス/出演:
セシル・ドゥ・フランス、サンドリーヌ・ブランク、

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