クレイジーズの画像

正気と狂気の間のあいまいな領域をサスペンスフルに描く

ゾンビ映画の教祖、ジョージ・A・ロメロ監督が1978年にリリースした『ザ・クレイジーズ』。それを現代に蘇らせたのが『クレイジーズ』である。この映画ではゾンビが恐怖の引き金となるのではない。人々を狂気に陥れるのは、誰もが不安に思うことなく口にする”水”だ。

平和で牧歌的で、ある意味閉ざされた田舎町、オグデンマーシュ。住人同士お互いを知り尽くしているような町ののどかな午後、男が野球場に乱入してくる。その男もどこにでもいる無害な普通の父だったはずなのだ。

貯水場からの近さによって次々と町の人たちは狂気に陥っていく。町はたちまちパニックと狂気の渦に飲み込まれるが、軍が現れ町が封鎖されるに従い、恐怖は別種の現代的ともいえる様相を帯びる。

恐怖が発生する過程、さらに次々と違う種類の恐怖が畳み掛けてくる展開が見事だ。当初の恐怖が”水”だったことを忘れてしまうほどである。身近な人が狂気に陥れられるのを目撃するうちに、果たして正気とは何だろうと考えさせられてしまう。

映画はラストに本当の『クレイジーズ』がどんなものなのかを示唆するが、それ自体、普通に考えれば正気以外の何者でもない。正気と狂気の間の空間は案外狭くてあいまいなものなのかもしれない。

主人公の保安官を演じるのは、『ヒットマン』、『ダイ・ハード4.0』 のティモシー・オリファント。女医の妻に『サイレントヒル』のラダ・ミッチェル。保安官補を演じるジョー・アンダーソンは、売り出し中のイギリス出身俳優。公開作の『アメリア』にも出演し、や『トワイライト』シリーズの次回作にも出演が決まっている。彼の繊細な演技が、映画に微妙な格調とアクセントを与えている。

一滴の水が巻き起こす恐怖を描きつつ、環境問題や軍備問題等、現代の私たちが感じる身近な不安も強調されるモダンなホラーの問題作である。

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2010年11月13日(土)より、シネマサンシャイン池袋、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ他、全国ロードショー!
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