イントゥ・ザ・ストーム 映画レビュー

©2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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最近は日本だけでなく世界中で異常気象らしい。アメリカでも竜巻の被害は格段に増えているようだ。その恐ろしさをpov映像(手持ちカメラなどを使った主観映像)で描いているのが、『イントゥ・ザ・ストーム 』だ。

竜巻に可能な限り接近し、宙から、横から、ついには竜巻の中に入り込み、内側からの様子も描かれる。自分もすっぽり竜巻に取り囲まれたような感覚だ。巨大な積乱雲、スーパーセルから竜巻がいくつも生まれ、小さなのどかな町に急襲し、その近辺を破壊し尽くす。

主観映像は、竜巻のプロであり、発生をあらかじめ予測し撮影するストームチェイサーたちだけのものではなく、YOUTUBUにアップするためにおかしな映像を仲間内で撮影しあう、地元の若者や、卒業式のための記念映像を撮る高校生兄弟も、竜巻との遭遇映像をとらえる。

その高校生兄弟の父親で、二人が通う高校の教頭をしているゲイリーが主人公なのだが、彼の主観映像はなくて、たまたまそこに居合わせただけなのが面白い。ゲイリー一家や、ストームチェイサーの気象予測担当のアリソンが抱える小さなドラマは、ストーリーの片隅に遠慮がちに鎮座している。あくまでも主役は、巨大竜巻と、その底知れない破壊力なのだろう。

ストームチェイサーの竜巻に対する執着と情熱もかなりのものだ。彼らが乗っている竜巻追尾用車両は、装甲車並に頑丈で、風に飛ばされないように地面に鉄柱を埋め込むシステムさえある。360度回転式のカメラの装備は当然だ。彼らは竜巻を追いかけて、映像をものにするために文字通り全てを賭けているのだ。

個人的には、『ホビット』シリーズでの中心人物の一人、トーリン・オーケンシールドを演じているリチャード・アーミテッジが教頭役のゲイリー役を演じているのが、一番楽しみだった。だが、彼のカリスマ性は、竜巻とストームチェイサーたちに乗っ取られてしまったようだ。人間ドラマを期待してはいけない。竜巻の脅威を体感しに見に行くべき映画なのだ。   (オライカート昌子)

イントゥ・ザ・ストーム
2014年8月22日 丸の内ピカデリー 新宿ピカデリー他全国ロードショー
イントゥ・ザ・ストーム公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/intothestorm/