(c)2014 Universal Pictures
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 いつのころからか、人間は脳を10パーセントしか使っていないという、ひどく気をそそる説が巷間に流れている。これは俗説だそうだが、さすがというべきか、リュック・ベッソンは堂々とその説にのっとって一本作り上げた。スカーレット・ヨハンソンが、この説の実験台に選ばれ、脳の覚醒とともに驚異的変化を遂げるヒロインに扮して大活躍する。俗説であろうとなかろうと、覚醒し、変貌し続ける美女というのは蠱惑的で、彼女自身がまるで興奮剤のようだ。

 つまらぬ男にひっかかったせいで、やくざの巣食うホテルの一室に連れ込まれたルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は、下腹に「ある物質」入りの袋を埋め込まれた。その袋が破れて物質が急激に体内を駆けめぐり、彼女の脳の覚醒スイッチが入った。まずは超人的体力、知力が目覚め、さらには記憶力、読解力、念動力、そして再生力と、スーパーウーマンをはるかに超えた存在になる。

 とにかくスカーレット・ヨハンソンの見せ場の連続だ。チープないでたちも、うす汚れた衣装も、ハイファッションも、金髪も黒髪もすべてセクシーである。すさまじいスピードで全知全能の存在に向かって突き進み、やがて「死」をも超越する。彼女に銃を向ければ、銃弾がぽろぽろこぼれ落ちる。すべての超能力者がこの手を用いれば敵との対決はたやすいのに、そうすれば無駄な銃撃シーンはいらなくなるのに、と拍子抜けする思いである。

 ルーシーを利用しようとしたのはマフィアのボス(チェ・ミンシク)で、世界中に「ある物質」をばらまくもくろみは、彼女との戦いで次々につぶされていく。どうあがいても、脳稼働率100%めざして覚醒するルーシーを倒すことはできないのに、あくまで一般人の脳力(能力)で戦い続ける姿は人間的と言えば人間的。その直情ぶりと野蛮さが、なんともいえないおかしみを誘う。韓国の大物俳優、チェ・ミンシクの貢献度はなかなかのものである。

 もう一方の大物が脳科学者ノーマン博士を演じるモーガン・フリーマン。実証されていないあやしげな説も彼の口から語られるともっともらしく聴こえる。明晰さを増したルーシーは、彼を信頼できる相手と見定め、協力を仰ぐ。モーガン・フリーマン繋がりで思い出すのは『トランセンデンス』で、人間が神にも及ぶ存在になるというテーマは共通しているが、感触はまったく違う。

  こちらは、美女が変貌の果てに全人類を導く存在になり、地球平和に大いに貢献することになるというのがポイントだ。そんなうまい話があるものか、と言うなかれ。これは美女の変貌が世界にもたらす幸福についての物語なのである。『フィフス・エレメント』や『ジャンヌ・ダルク』を引き合いに出すまでもなく、リュック・ベッソンはおのれが選んだ美女に全世界を託したいのであろう。信念すら感じさせる愚直なスケベオヤジに敬意を表したい。     (内海陽子)

LUCY/ルーシー
8月29日(土)、TOHOシネマズ 日本橋ほか全国公開
PG12
LUCY/ルーシー公式サイト http://lucymovie.jp/

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