(c)2012 Paco Cinematografica srl.
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映画を観た帰り道で時々こんなことを考える。

それは『今日観た作品を果たして一年後まで覚えているだろうか?』という映画を観る上での宿命的な疑問である。

今さら説明するまでもないが、映画というのは公開日があり、そして必ず最終日がそれも突然にやってくる。それは例えるなら賞味期限のようなモノで必ず旬の期間を過ぎると腐敗してしまう運命にあるのだ。

しかし、当然ながら全ての物事には例外がある。

その数少ない例外が本作『鑑定士と顔のない依頼人』である。

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本作の主人公である凄腕オークション鑑定人のヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、大の人間嫌い。別の言い方をすれば女性の愛をまったく信じていない男で、自室の壁に飾られた女性の肖像画を眺めていることだけを楽しみに人生の終盤戦を過ごしている。

しかしある日、彼はクレア・イベットソン(シルヴィア・ホークス)と名乗る27歳の女から鑑定依頼の電話を受け取る。両親が一年前に亡くなってしまったので、その遺品である絵画や家具を見て欲しい、という依頼だ。

さっそく彼は彼女が住んでいる屋敷を尋ねるのだが、約束の時間になっても彼女は出てこず、その門の先に入れないまま、要するにドタキャンを食らってしまう。

そして彼女から『交通事故で入院した』という言い訳がましい電話がかかって来たので根っからの人間不信の彼は激怒して二度と会わないと宣言をするのだ。

しかし、ここで面白いのが今まで人間嫌いで通してきた彼にしては珍しく彼女とはその後、継続的な関係になってしまう部分だ。

つまり、彼は彼女に謝罪をされるとその屋敷に再度足を運ぶのである。

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しかし、彼女はまたしても『熱が出た』という明らかに怪しい言い訳で会ってくれないのだ。

まさにこの段階でタイトル通り『鑑定士と顔のない依頼人』という関係になるのだが、この二人には興味深い共通点があるのだ。

それはつまり、お互いが人間を根本から信頼していないために、人間嫌いになっているという点だ。

具体的には彼は早くに親を亡くし、友人、恋人、子供がいないという設定。彼女は“広場恐怖症”で15歳の時から誰ともあっていない、つまり12年間引きこもりという設定だ。

要するに孤独な人間同士が運命に引き寄せられるように急接近するのだ。

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鑑定を通じて二人は心を通わし、恋愛関係まで発展していくのだが、最後の最後にラスト10分間に“大どんでん返し”がある。そこに行くまでの全てが伏線になっている映画なのだ。

エンディングシーンで良い意味で唖然としてしまった映画は本作が初めてで、この余韻は向こう一年間は続くのではないか?と思っている。

鑑賞スタイルとしては予備知識をいっさい入れずに、必ず友だちを誘って行ってもらいたい。

必ず議論になる作品だということはここで保証する。

本作はミステリーで、そのテーマ自体が重大なネタバレを含んでいるためにここでは多くを語れないのが残念だが、見逃し厳禁の傑作である。 (小野義道)

鑑定士と顔のない依頼人
2013年 イタリア映画/ミステリー/131分/原題:La migliore offerta(The Best Offer)/監督:ジュゼッペ・トルナトーレ/出演・キャスト: ジェフリー・ラッシュ、シルヴィア・フークス、ジム・スタージェス、ドナルド・サザーランド、フィリップ・ジャクソン、ダーモット・クロウリーほか/配給:ギャガ
12月13日、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館他全国順次公開
『鑑定士と顔のない依頼人』公式サイト http://kanteishi.gaga.ne.jp/

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