(c)2012 Zentropa Entertainments19 ApS and Zentropa International Sweden.
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『ひかりのほうへ』のトマス・ヴィンターベア監督作で、『カジノ・ロワイヤル』のマッツ・ミケルセンが主演したヒューマン・ドラマ。ミケルセンは、本作でカンヌ国際映画祭の主演男優賞を受賞した。

親友の幼い娘がついた小さな嘘で、村八分にされる男の悲劇である。いわゆる集団ヒステリーの犠牲になるのだ。主人公のルーカスは離婚と失業を乗り越え、今は幼稚園教師の職を得て平穏な日々を送っている。隣家に住む親友の娘クララも園児の一人で、ルーカスによくなついている。ところが、彼女の作り話がもとでルーカスは変質者の烙印を押され、全てを失ってしまう。

偽らざる者の画像
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ヴィンターベアは『セレブレーション』や『ひかりのほうへ』でも、普段は隠されている人間の牙のようなものを描いていた。本作では「子供は真実を話す」という大人の思い込みが試される。人は、真実を知りたいという欲求を持ちながら、周りがそうだと言えば自分も頷かざるを得ない「同化」の本能もある。幼稚園の職員からPTAへ、そして町全体へとルーカスの濡れ衣は広がっていき、彼の息子までもが理不尽な扱いを受ける。

当初、町の人々は子供たちを守るためにルーカスを遠ざけようとしていたはずが、次第に真実を追究しようとする姿勢から遠のいて、ただ暴力的になっていく。ところで、”決して悪気があったわけではない”問題の少女・クララのうつろいやすい感情がやや不明瞭で、彼女が虚言を吐くきっかけとなる出来事がやや分かりにくかった(ルーカスは立場上クララの好意を拒絶するが、クララもルーカスの「君がくれたのかい」という質問に対して何故か否定している)。

それから、何故クララの作り話の内容があんなものだったのか。映画の前半で、少女の兄が性的な動画を見せたからなのか。いずれにしても、少女の本心に関しては謎が多かった。

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人生が暗転した哀れなルーカスの行く末から目が離せないが、彼の親友が次第に冷静になっていく過程も大きな見どころである。ラストは突然、一年後。私たちが一番見たかったシーンは見事に省かれている。この演出は敢えてそうしたとしか思えず、もどかしさすら感じるが、一見ハッピーエンドに見える締めくくりは、どんなことがあっても取り戻せない大きな傷跡を残していく。

原題の”Jagten”(英題:THE HUNT)は、「狩る」という意味。象徴的なエピソードとして挿入される狩りのシーンは、まさにルーカスと町の人々そのものなのだ。 (池辺麻子)

偽りなき者
Bunkamuraル・シネマほかにて公開中
配給:キノフィルムズ

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