(c) 2014 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
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 いったん科学技術に頼ってしまったからには、リスクを承知で前進し続けるしかない。わたしはかなりアナクロな人間だが、世の中はそういうものだと思う。第一、人間には好奇心というものが備わっているので、もしコンピュータに人間の脳の情報を移すことが可能になったら、試したくなるのは人情というものだ。しかもそこに“愛情”がからめば、それはほとんど“正義”と化す。

 人工知能の研究をする科学者ウィル(ジョニー・デップ)は、科学技術の発展に反対する過激派組織のテロに遭い、余命数週間となった。彼の妻で研究のパートナーでもあるエヴリン(レベッカ・ホール)は、瀕死の夫の頭脳をスーパー・コンピュータの中で生かし続ける実験に没頭し、ついに成功させる。

 その結果、彼が万能で優れた人間=コンピュータとして生き続け、世のため人のために立派な行いをすればなんの問題もないが、それではドラマにならない。というよりも万能に近づいた者は、それが機械であれ人間であれ、世の中を自分の好きなようにしたいと願うのが当然であり、それが“正義”になる。

 コンピュータの中で目覚めたウィルは世界を変えるべく行動を開始。さびれた町を最新のハイテク施設を備えた地域に変え、再生治療の開発にまい進する。障害を持つ人々が健常者以上の能力を持ち始める様子は見ていて感嘆するが、ウィルの恩師ジョセフ(モーガン・フリーマン)は「彼は軍隊をつくっている」と看破し、エヴリンに言う「あれを造ったのは君だ」。

  世界の決定権を握っていると気づいたエヴリンに感情移入したわたしは、彼女の行動を息詰まる思いで見守る。ウィルのナノウィルスが地球上にばらまかれ、彼は世界の独裁者になりつつあるが、彼の暴走を止めるアンチウィルスを仕込めるのは彼女をおいてほかにない。だが万能のウィルは「心臓の鼓動が速い、汗をかいている、ぼくを恐れている」とエヴリンの動揺からそのもくろみを見抜く。ゴージャスな映像マジックが展開されて気分は高揚するが、夫婦間の感情の駆け引きこそがクライマックスだという一点は揺るがない。そこが好きだ。

  世界(自分自身)とエヴリンのいのちを天秤にかけることになり、最終決断を迫られたウィルの態度は、しごくまっとうで気高い。わたしは大いに共感するが、この夫婦以外の人間はとんでもない状況下に置かれることになる。皮肉なことに、過激な反テクノロジー運動がひとつのきっかけになり、彼らの思惑をはるかに超えて、地球は過敏に過剰に浄化されていく。

  どうでしょう、みなさん、現実世界もこうなる可能性がありますよ、きちんと自分の頭で考えていますか。意地の悪い問いかけが聞こえてくる。
                               (内海陽子)

トランセンデンス
■監督:ウォーリー・フィスター アカデミー賞撮影賞受賞(『インセプション』)
■出演:ジョニー・デップ、モーガン・フリーマン、ポール・ベタニー『ツーリスト』『ダヴィンチ・コード』、レベッカ・ホール『ザ・タウン』『プレステージ』、キリアン・マーフィ『ダークナイト』シリーズ『インセプション』、ケイト・マーラ『127時間』『ブロークバック・マウンテン』
■アメリカ映画 ■配給:ポニーキャニオン/松竹 共同配給

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