『デッドプール2』映画レビュー

待ってましたの『デッドプール』らしさはXフォース結成からが本番

あのやりすぎヒーローが帰ってきた。二作目ということで、アクションも毒舌も二倍になっている。当然予算も二倍以上だ。前作の大ヒットを引っさげて、観客の期待値もかなり高くなっているはずだが、”泣ける”ストーりーで度肝を抜いてくれる。

『デッドプール2』は、前作のティム・ミラー監督が降板してしまったため、『アトミック・ブロンド』や『ジョン・ウィック』シリーズのデヴィッド・リーチが監督している。

彼はスタントマン出身で、アクション監督作品も多い。そのためアクション主体になりそうなところだ。アメコミヒーロー映画がアクション主体なのは、当然のことなので、それでいいじゃんという意見もあるはずだが、『デッドプール』シリーズとしては物足りない。

オープニングからしばらくは、ジョン・ウィック風のシリアスかつ、スタイリッシュなアクションが炸裂。くどい様だが、アクション映画を見に来ているならそれで十分。でも、これは『デッドプール』なのだ。シリアスでいいの? と思ってしまう。

待ってましたのデッドプールらしさ、つまり、ノリと突っ込み満載のコメディアクション濃度は、Xフォース結成のあたりからドライブがかかってくる。これでいいのだ こうでなくちゃっていうウキウキな気分も盛り上がってくる。ストーリーは決してコメディ系ではないのだけれど。

ヒーローとして大活躍中のデッドプールこと、ウェイド・ウィルソン。彼は悲劇に見舞われる。悲劇を振り払うために”いい奴”になることを決意する。Xメンの見習いになり、人助けをするのだ。任務のために訪れた、ミュータント孤児院で両手から火の玉を出す、少年ミュータント、ラッセル/ファイアーフィストと出会う。制御不能になっている少年を救いたいと願うが、マシーン人間、ケーブルが未来からやってきて少年を狙っていた。少年を救うために募集を賭けXフォースを結成することにするのだが。

ちなみに脚本は、前作と同じに、レット・リースとポール・ワーニック。そして主演のライアン・レイノルズも参加している。映画は絵柄とアクションで見せるものだけど、その骨になるのは、やっぱり脚本だ。

こっちが思うことを全部、せりふなどで突っ込んでくれるところはとても気持ちいい。たとえば、『ジョン・ウィック』では、容赦なく犬も殺される。監督はそういう奴なのだとか。

その毒舌ぶりは、ライバルアメコミグループ(DCコミックのジャスティスリーグ)にも向かうし、主演本人のライアン・レイノルズ(俳優のほう)も無傷ではない。そう、ライアン・レイノルズと言えば、(歴史的失敗作}『グリーンランタン』をどうしても思い浮かべてしまうよね。

個人的に一番嬉しかったのは、「サノス!」のひとこと。時期的にもジョシュ・ブローリン(ケーブル)が登場すれば、あの長大豪華な『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』をほぼ一人で乗っ取ってしまったサノスが脳裏を駆け巡るのはいたしかたない。あえてその一声かけることで、観客の頭の中の声をとりあえず打ち消し、こっちはケーブルだよって強調する必要がある。

そしてこのジョシュ・ブローリン演じるケーブル。サノスを引き合いを出す必要もなく、『デッドプール2』も早速乗っ取ってしまっている。映画界を席巻しパワーを見せつけているのは、そのシリアスな存在感たっぷりのキャラクター。シリアス過ぎて微笑んでしまう感じは彼がピカイチかもしれない。2倍になった『デッドプール2』の制作費のかなりの部分も、きっと彼がもぎ取ってしまっているのだろうね。

(オライカート昌子)

デッドプール2
(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
監督:デヴィッド・リーチ
キャスト:ライアン・レイノルズ、ジョシュ・ブローリン、モリーナ・バッカリン、T.J.ミラー
配給:20世紀フォックス

公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/deadpool/