戦うのは自分のためではない。愛に心がわしづかみされる号泣映画

サウスポーの画像
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最近のジェイク・ギレンホールの活躍には目を見張るものがある。派手な超大作に出演して話題になるのではなく、良い作品を地道に探して出演しているのがわかる。『サウスポー』はその中でも私が一押ししたい作品だ。

成功の只中にいるボクシングチャンピオン。家族と地位と豪勢な暮らしに恵まれたビリー・ホープだったが、弱点があった。それは、パンチを受けて血だらけになりながら勝つこと。痛みと怒りが彼の戦いの原動力だった。だがそんな戦い方では選手生命は短くなってしまう。と、愛する妻のモーリーンは心配するのだった。ある日、彼は突然の悲劇に見舞われる。それをきっかけに転落したビリーは、今まで持っていたものをすべて失ってしまう。しかし、彼は、一番大切な存在を永遠に失うわけにはいかなかった。もう一度立ち上がり、戦うしかない。

『トレーニング デイ (2001)』や『イコライザー (2014)』、『エンド・オブ・ホワイトハウス (2013)』などで、タフで寡黙な男の世界を描き続けてきたアントワン・フークワ監督だが、『サウスポー』では違うアプローチを取っている。前半は、劇的効果を最大限にしたエモーショナルな描写で観客の心を揺さぶる。後半でようやく、フークワ監督が描き続けてきた光景が徐々に姿を現す。あるべき姿のための戦いの世界だ。

ビリーは、完全に生まれ変わらなくてはならない。師を見つけ修行し、自分を見つめ弱さを克服しなければならない。その方法は、ボクシングのトレーニングなのに、アジアのカンフー映画のような方法を取るところが個性的だ。そんなミスマッチは、普通だったら、笑みがもれてしまうかもしれないところだが、ビリーの後がない本気度のせいで、こっちも緊張してハラハラして見入る。笑うどころではない。

闘いの先には最大の見せ場と、驚きの秘策が待っている。これも他のボクシング映画にはないことだ。その秘策を最後の最後に持ってくるところが、映画自体最大の仕掛けのはずだ。

でも一番心に残るのは、ビリーがフードをかぶって、ジムの片隅に座っている姿だ。人間はみんな孤独の暗黒の底を知っている。だからこそ、大切な人のために必死になれる。必死にならなくてはならない。 

 (オライカート昌子

サウスポー
6月3日(金) 感動のロードショー
キャスト:ジェイク・ギレンホール、フォレスト・ウィテカー、レイチェル・マクアダムス、ナオミ・ハリス、カーティス・“50Cent”・ジャクソン、ウーナ・ローレンス
監督:アントワーン・フークア 脚本:カート・サッター製作:アントワーン・フークア、トッド・ブラック
作曲:ジェームズ・ホーナー 主題歌:エミネム「Phenomenal」(ユニバーサル ミュージック)
提供・配給:ポニーキャニオン 宣伝:KICCORIT
2015年/アメリカ/英語/スコープサイズ/124分/ドルビー・デジタル/原題:SOUTHPAW
公式サイト http://southpaw-movie.jp