きいろいゾウ画像
(C)2013西加奈子・小学館/「きいろいゾウ」製作委員会
西加奈子のロングセラー小説を廣木隆一が監督が映画化。キャストに宮前あおいと向井理を迎え、二人の初共演が実現した。

可愛い紙に包まれた苦いキャンディのような映画。象徴的なシーンが多いことやツマのキャラも含めて現実感が掴みにくいが、真実の夫婦愛が巧みに表現されている。宮崎あおいはここ数年、子供の居ない夫婦の妻役を演じることが多く、夫に対する呼称が一風変わっていたり、情緒不安定だったりなど共通点がある。今回も「またか…」と一瞬構えてしまったが、よく見ていたら彼女にしかできない、そしてこれまでの「妻」役で最も彼女らしいと思えるものだった。

ツマは植物や動物と会話をすることができ、月の満ち欠けに体も心も支配されている。時折精神的に不安定になるが、そんな彼女から大きなインスピレーションを受けているのが、売れない作家で夫でもあるムコだ。彼の温かい愛情に包まれ、一見幸せに見える夫婦だが、大事なことは殆ど語り合っていない。秘密を抱えたまま、そして「実は秘密がある」ことに互いに気づいているものだから、どうしてもギクシャクしてくる。ムコには過去に愛した女性がいるらしい。病を抱えるその人に会うため彼が東京に行くとき、直感で気づいたツマが無言で反抗する。彼女の子供っぽい怒りを止めようとするムコの手に、容赦なく打ち付けられる食器。衝撃的な暴力シーンである。

ファンタジーの形態を取っているのは、おとぎ話のスタイルを取った哲学だから(そもそも、おとぎ話とはそういうものだ)…と私は見た。これは、男と女の、最も理想的でシンプルな形だ。ネガティブではない「女の弱さ」のようなものを、「力ではない強さ」で男が守る。どちらも、身を削るように相手を責め、そして庇う。それが、全力で人を愛するということだ。この映画には3組の夫婦が出てくるが、いずれも妻に事情があり、夫が何とか妻を理解してやりたいと葛藤している。

ツマは、ムコの解放と共に何かがふっきれたのだろうか。映画の後半で、木や犬の声が聞こえなくなっているツマに気づかされた。 (池辺 麻子)

きいろいゾウ
013年2月2日(土)“夫婦の日”より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
原作:西加奈子 「きいろいゾウ」(小学館刊)
監督:廣木隆一 (『ヴァイブレータ』『余命1ヶ月の花嫁』『雷桜』)
出演:宮崎あおい 向井理 柄本明 松原智恵子 リリー・フランキー 濱田龍臣 本田望結 ほか 配給・宣伝:ショウゲート 
公式サイト http://www.kiiroizou.com/

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